腰痛症も3回目の記事になります。
今回は、
『腰椎椎間板ヘルニア』についてです。
腰痛で悩む方の
3割にみられる状態といわれています。
椎間板とは、椎骨(背骨)と椎骨の間にあるクッションです。
これは、内側に髄核と呼ばれるゼリー状の内容物を線維輪と呼ばれる軟骨が外側から包み込む様な構造になっています。
このおかげで、身体にかかる重力を四方に分散できるので腰を自由に動かすことができます。
タイヤがゴムと空気の力を利用してクッションの役目をしているのと似ています。
その椎間板に大きな力が加わり亀裂が生じ、
髄核が
線維輪から外に
飛び出した状態を腰椎椎間板ヘルニアと呼びます。
「ヘルニア」とは、臓腑器管の1部が本来収まっているべき位置から飛び出した状態をさすので、腸が飛び出した脱調を腸ヘルニアと呼んだりもします。
≪原因≫椎間板は
加齢や
疲労の蓄積によって引き起こされる血行不良や酸素不足で少しずつに内部の水分が枯れた状態になります。
この現象により本来もっているはずの弾力性や伸縮性が弱くなってしまうのです。
そうなると・・・上下からの強度の圧迫刺激により、椎間板がつぶれる。線維輪が裂けて中の髄核が飛び出る。などの状態になります。
これらは、長時間の不良姿勢や重いものを持ち上げるなどでの腰椎への過度の負担、スポーツ障害、腰椎の捻挫、クシャミなどで起こります。
また、4種類に分類することができます。
(1)椎間板全体が後方に膨隆する。
(2)髄核が線維輪を破って後方に移動し、靭帯(後縦靭帯)でとどまる。
(3)髄核が靭帯(後縦靭帯)を破っているが椎間板と連続している。
(4)髄核が椎間板から遊離してしまった。髄核が飛び出る方向によって症状に違いがでてきます。
整形外科などの専門病院で画像を撮ると詳しい状態がわかります。
≪症状≫髄核脱出の程度、方向により
腰痛、
下肢痛、
下肢の痺れ、
下肢の筋力低下などの神経症状が現れます。
ヘルニアが靱帯を破って飛び出すと強い腰痛は減少しますが、
坐骨神経痛が起こります。
坐骨神経痛は左右のどちらか片側に起こることが多く、単に椎間板変性や椎骨の変形だけでは腰痛にはなりません。
椎間板や神経が傷ついたり刺激されたりすると痛みが出現します。
分類の(3)(4)では、3ヶ月~6ヶ月位でヘルニアが自然に吸収されることがあります。
これは、白血球のマクロファージ(大食細胞)が脱出部位を異物とみなして食べてしまうからです。
遊離型ヘルニアの30~50%で吸収がみられますが、まれに、後縦靱帯を破った脱出型にもみられます。
≪鍼灸治療≫鍼灸治療はもともと血流の改善、体内疲労物質の除去を非常に得意としている治療法です。
免疫機構を整えることで、ヘルニアの状態を改善していきます。
また、疲労している筋肉や椎間靭帯の付近や、その部位に関係しているツボを刺激することで緊張が緩和され、椎間にかかる負担を減らします。
下肢に強く痺れ症状が出ている時は、安静の指示が出されることが多いですが、積極的に鍼灸治療を行うことで、早期の回復が見込まれる場合もあります。
気候が安定してくると活動的になりますが、ひょうんなことで引き起こされるケースも多くあります。
「ちょっと腰に違和感があるな・・・」と感じている方は、日頃のメンテナンスとして鍼灸治療をお試しください。
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少し日が経ってしまいましたが・・・
<腰痛症>の続きです。
前回は
こちらになります。
一口に腰が痛いといっても、さまざまな原因や種類があるのです。
今回は、その中でも鍼灸治療の適応となる
『筋・筋膜性腰痛』についてです。
≪原因≫筋・筋膜性腰痛症は、主に活動している時に起こりやすく、腰の筋膜や筋肉の損傷によって痛みを引き起こします。
腰部は軸となる背骨(脊椎)を腹筋(腹直筋、内・外腹斜筋、腹横筋など)と背筋(脊柱起立筋、広背筋、腸腰筋など)がグルリととり囲むようにしてついています。
主な動作には、体幹を後に反らすような動き(伸展)や、前に倒すような動き(屈曲)、左右に捻るような動き(回旋)などがあります。
また、同じ姿勢を維持し続けていることや中腰の姿勢を維持しながらの動作など、これらが複雑に関係した動きもあります。
これらの動作は、腰部に大きな負荷をかけています。
ですから、無理な体勢や腰部の筋肉に負担のかかる動作時に、筋膜・筋肉が損傷されやすく痛みの原因となります。
「床に置いた段ボールを持ち上げようとした・・・」
「長時間座っていたので、伸びをしようとしたら・・・」
「朝、起きてすぐに前かがみで顔を洗っていたら・・・」
などの動作で腰痛になる方も少なくありません。
スポーツ中に無理な体勢をとってしまい引き起こす場合もあります。
背筋の緊張が強い慢性の症状では、主に使いすぎ(オーバーユース)による疲労の蓄積が原因となります。
≪症状≫筋・筋膜性腰痛の場合には、筋肉に沿った痛みがあります。
下肢のしびれや筋力低下、知覚障害などの神経症状や骨の異常はみられません。
もし、レントゲンを撮られて何か問題があると指摘された場合は、原因が筋肉以外のところにあります。
また、筋・筋膜性腰痛の症状があるのに何もせずにほったらかしてしまい、しばらくして・・
・安静時の痛み
・殿部から下肢のしびれ(坐骨神経痛)
・下肢の皮膚の感覚が異常(知覚障害)などが出現すると危険です。
慢性化した腰痛や、安静を保持していても再発する腰痛などは、時間の経過により筋肉だけでなく腰椎の変化や神経による原因が考えられます。
そのような場合には、整形外科を受診することをお勧めしています。
≪鍼灸治療≫鍼灸治療では、腰部の筋の緊張を緩和し、気血の流れを回復させることが目的となります。
腰部だけでなく、股関節や肩関節の動きをみながら、背筋や腹筋のバランスを整える治療を施していきます。
ですから、背中にもお腹にも鍼や灸をすることがあります。
状態によっては低周波治療器で電気をかける場合もあります。
もちろん、ツボの連携を考えて下肢や上肢にも行います。
鍼灸には
鎮痛効果がある為、治療後にはある程度の痛みは治まります。
でも、損傷された筋肉の回復には3~6週間の時間がかかるため、その後も無理な動作は避け、治療を継続することが望ましいのです。
当院でも腰痛を訴える方のうち、筋・筋膜性腰痛の方が多く来院されます。
温かくなると活動的になりますが、うっかり腰痛を引き起こしてしまうことが少なくありません。
日頃のケアをたいせつに、健やかにお過ごしください。
鍼灸という単語は聞いたことがあっても、どのような疾患に適応しているのかわからないとの声をよくいただきます。
なので、「鍼灸治療」のブログカテゴリを作ってみました。
ここでは、WHO(世界保健機関)や厚生労働省、鍼灸学会などが認定している疾患について紹介をしていきたいと思います。
で、まず初めが『腰痛症』です。
当院では行っていませんが、健康保険の適応疾患にもなっています。
鍼灸院を来院される方の半数以上が腰痛症でのだといわれています。
二足歩行を始めたために起こる症状だとされているので、四足歩行の犬や猫にはないのです。
あ。でも、ダックスフントやコーギーなどの犬種には起こります。
あれだけ胴が長ければ痛くもなりますね~。
我が家の犬も腰を痛めたことがあってひやひやしました。
腰痛ではなく、症が付くことにも意味があります。
“症”=“症候群”なので、原因不明であっても、共通の症状を訴える患者が多い場合にその集団にとりあえず名をつけ、扱いやすくしたものです。
つまり、「腰が痛いな~」という症状を訴える疾患の全般を指しています。
鍼灸治療では、腰部・腹部・下肢のツボに鍼をして治療をしていきます。
そのことで、血流量の改善や回復が促され、こり固まっていた筋肉に血液が巡り、全身が柔らかくなります。
ぎっくり腰などの急性で激しい腰痛には、腰部に炎症を起こしている可能性が高いので、アイシングを加えることもあります。
腰痛症の原因はいろいろありますが、原因が特定できる腰痛は、約15%といわれています。
その代表的なものは下記にあるとおり、レントゲンやCT、MRIなどの画像で判断できるものです。
・圧迫骨折
・椎間板ヘルニア
・腰部脊柱管狭窄
などです。
上記以外では、細菌感染、悪性腫瘍(がん)、臓器や血管などの疾病からの続発性のものなどがあります。
残りの85%の腰痛は、現代医学を駆使しても原因が特定できないといわれています。
推測される原因としては、以下のものが考えられます。
・身体的な影響を受けるもの:長時間同じ姿勢でいる仕事、運動不足、肥満、冷え症など
・精神的な影響を受けるもの:ストレスの多い職場、家庭内不和、不安、不眠など
・腰部・殿部・下肢部を支配する神経障害の影響を受けるもの
また、この様な複数の要因が絡まっているケースには、徐々に慢性化していくことが多くあります。
ですから、ただ単に腰が痛いといっても、鍼灸治療の適応と不適応があるのです。
<鍼灸不適応疾患>
いわゆる内臓疾患由来の腰痛や脊椎脊髄の腫瘍によるものです。
この様な場合、腰部・殿部の組織の血流改善の治療は可能ですが、原因となる疾患を専門の病院で診察・治療してもらう必要があります。
<鍼灸適応疾患>
主に筋骨格系由来の腰痛となります。
・筋・筋膜性腰痛
・姿勢性腰痛
・椎間関節性腰痛(ぎっくり腰)
・腰椎間板ヘルニア
・脊椎間狭窄症
・脊椎分離症・脊椎すべり症
整形外科などの医療機関で診断を受けられた場合、鍼灸治療の適応になるケースが多くあります。
ここからは、各々の腰痛症をひとつひとつあげていきたいと思います。
もし、腰が痛くてお困りの方は、鍼灸治療を受けてみてはいかがでしょうか。